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2026.02.24

イノシシ被害に備える菊池市|地域ぐるみの鳥獣害対策

農家ハンター・イノP応援団 フォトライターの髙木あゆみです!

彼らの現場で見て感じたことを、写真と共にレポートします。

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熊本県菊池市の2地域で、鳥獣害対策セミナーと現地実習を行いました。

地域で高まるイノシシ・シカへの不安

熊本県菊池市の2地域で、鳥獣害対策セミナーと現地実習を行いました。

住民の皆さんの声は、とてもリアルでした。

・シカはまだ大きな被害はないが、出始めている。
・山の斜面が崩れている。あれはイノシシだろう。
・栗畑が心配。
・イノシシが牛の飼料ロールを破る。

「まだ大丈夫」から「そろそろ本気で考えないと」のシーンに入る、その境目にある地域のようです。

個々で対策している方はいますが、地域として動き出すのはこれから。
電気柵とワイヤーメッシュ柵を、地域で設置していく予定だそうです。

稲葉たっちゃんが言いました。

「柵を張る前に、まず一緒に学ぶ機会をつくってください」
「みんなで地域を歩いて、どこにどう張るか話して考えていくといいですよ」

鳥獣対策は、資材より先に “合意形成”から進めていくのが大事です。

 

マニュアルは進化している!

行政から配布される防護柵についての仕様書(いわゆるマニュアル)は、前と今で変わっていることがいくつもあります。

この日挙がったのは、
・トタンを柵に使う
・ワイヤーメッシュ柵は 端と端を繋ぎ合わせて張る

 

今はトタンではなく電気柵やワイヤーメッシュ柵が主流ですし、
ワイヤーメッシュ柵は強度を考慮し一列重ねて張ることを推奨しています。
時代は進み、対策のノウハウは蓄積され、進化しています。
行政の担当者も学ぶ機会を持ち知識も増えていっていますので、官民共にアップデートしながら協働していけるといいですね。

 

 

中には女性も来てくださっていました。
「何も分からないのに来ていいか分からなかったけど、牛の飼料用の牧草が食べられているので勉強しとこうと思って参加した。何も知らんかったから、来てよかった」とおっしゃっていました。
力仕事の担い手は男性になることが多いですが、管理の面では特に女性の力が発揮されます。

セミナーの様子、動画にまとめました🙌

 

現地研修で見えた侵入ポイント

さて、実地研修で畑へ。

 

草刈りがきちんとされ、電気柵も美しく設置されていました。
管理がしっかりされていることは一目瞭然です。

 

 

ここは道路側から畑にイノシシが入ってくるそうです。

抜け道といえばここかな?というところが。

側溝がある部分をくぐって入ることができます。少しの隙間でも中に美味しいものがあると知ればがんばるのが野生動物。

電線におもりをつけたりして地面から20cm、40cmを守れたら段差も怖くありません。

 

この周辺にはピンクのテープが張ってあることが多かったです。

動物避けとして売られているピンクのテープ。
最初は違和感から動物は近づかないでしょうが、テープの存在に慣れてしまえば効果があるのか疑問があるのでイノPでは特に推奨していませんが、ここでは動物がテープを動かしている形跡がなく効果があっているのではという考察から多くはられているそうです。

電気柵と併用することで効果があるのかもしれません。

 

 

 

 

鳥獣害対策を前に進めるのは「チームワーク」

リーダーが勉強熱心で、いろいろと考えて実践していらっしゃり管理が行き届いている地域でした。
そして地域の皆さんが普段からコミュニケーションをしっかりとっておられることが伝わりました。
鳥獣対策の大きな一歩は、この地域内のチームワークです。

菊池市のご担当者も熱心に学んでおられる方のようでしたので、これから更に住民と共に具体的効果的な対策が進んでいくことと思います。

 

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2026.02.10

ペーパーわな猟ハンター研修会に密着|止め刺しと罠を現場で学ぶ

農家ハンター・イノP応援団 フォトライターの髙木あゆみです!

彼らの現場で見て感じたことを、写真と共にレポートさせていただきます。


 

熊本県主催「ペーパーわな猟ハンター研修会」にお邪魔してきました!

山都町にある清和山村基幹集落センターで座学を行い、「ジビエ工房やまと」さんでは止め刺しやジビエについて学び、近隣の山で罠の現地研修が行われました。

今年から始まったこの研修会には、狩猟免許を取ったばかりの方、取得していたものの実践経験が乏しい方、実際の現場を見て学びたい方など、さまざまな立場の参加者が集まりました。

写真とともにレポートします📸

 

座学、司会は井手くんです!

 

熊本県では若手育成を目的とした研修事業が始まっています。高校生への啓発にも力を入れており、狩猟免許取得者の平均年齢は年々下がっているそうです。

年に8回も狩猟免許試験があるのは熊本県の強み、という話もありました。普及・啓発に力を入れており、研修も多く開催されています。研修では行政関係者が受講することもあり、熱心に学んでおられます。

 

免許を取得しただけでは狩猟はできません。登録を行い、狩猟期間内のみ狩猟が可能です。一方で、鳥獣害対策としての捕獲活動は、地域差はあるものの狩猟期間に縛られず活動できます。

 

 

 

例えば、登校路の近くでくくり罠を設置するのは非常に危険です。罠にかかった動物は興奮状態になり、足がちぎれても逃げようとするほど攻撃的になります。ワイヤーが切れて人に向かってくることもあり、ベテランでも緊張感を持って対応しています。

こうした基本的な知識を学べる場として、この研修会はとても重要だと感じました。

 

銃猟免許を持っている人でも、誰もが銃を所有しているわけではありません。このサンプルも、銃猟免許を持っている人だけが触れるものです。

 

ジビエ工房やまと

止め刺しについて話をしてくれたのは、《ジビエ工房やまと》さん。

朝に捕獲した小ぶりのシカを前に、止め刺しのコツを丁寧に教えてくださいました。

 

 

止め刺しも、免許を取ったからといって誰でもスムーズにできるわけではありません。稲葉たっちゃんにも、苦しい思い出があります。動物にできるだけ苦痛を与えず、ストレスを最小限にするための大切なポイントを教えてもらいました。

 

コツは”同じ”

ナイフを入れる際は、同じ向き・同じ角度・同じ地面の状態(フラット、でこぼこなど)で経験を積むこと。

「こっちかな?」「あっちかな?」と毎回条件を変えてしまうと、「ここだ!」という感覚がつかみにくく、なかなか上達しないそうです。

そのため、ひたすら同じ条件で繰り返し経験することが大切だそうです。

 

 

 

食べる?or 食べない?

捕獲した獲物を「食べるか・食べないか」によって、止め刺しの方法や搬送、ナイフを入れる部位が変わります。

 

 

電気ショック

血抜きの前に電気ショックを与える方法があります。電気ショックを当てた部分は肉として食べられません。そのため、肉になる部分は避けて行います。お腹に当てても肉質への影響は出にくいとのことでした。

 

止め刺し

銃を使う場合は、動物へのストレスが少なく、肉質も良好です。ただし、銃免許を持っている人に限られます。散弾銃ではなく、一発玉で首を狙います。

ナイフを使う場合も、刺す場所によっては肉が使えなくなるため、それを踏まえて位置を決めることが重要です。

搬送

食べる場合は、道具に乗せて捕獲場所から車まで搬送します。引きずって運ぶとアザができ、その部分は食べられなくなってしまいます。食べない場合は、搬送方法は問いません。

 

地元の猟友会の方々に話を聞いたり、実際の現場を見せてもらってから実践することが大切だと感じました。

 

罠の現地研修へ

箱罠

 

実践を前提とした講習だけあって、参加者の皆さんの「学びたい」という気持ちがひしひしと伝わってきます。

 

山のどんな場所に設置するのか。動物が警戒心を解いて入りやすいのはどんなところなのか。

床に板を敷くべきか、上に物を置いてもいいのか。エサは何をどのくらい入れるのか。カビたら入れ替えるのか。捕獲したら場所を変えるのか。

実際の現場を見ながら、次々と疑問が解消されていきます

 

 

くくり罠

清和支部の猟友会の方が、設置を実践してくださいました。

長年の経験から編み出した“オリジナル虎の巻”は、普通なら門外不出。それが今回は「全部教えます!!」と言って、惜しみなく見せてくださいました。

どんな場所に、どのくらいの深さで、どのくらいの強さで仕掛けるのか。その一つひとつに理由があり、皆さん真剣な表情で見入っていました。

市販品だけでなく、改良したり自作したりする人も少なくないそうで、それも実際に見せていただきました。​太っ腹!!!

 

 

知識を集めて、経験をしながら自分ならではのやり方を見つけておられます。

参加者の皆さん、食い入るように見つめていましたよ。

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研修終了後、参加者の方にお話をお聞きしました。

*阿蘇で農業をしていて、野生動物による被害が目立ってきた。免許を取り、罠を買ったばかりだったが、仕掛け方が分かった。ジビエとして食べるのも楽しみです。

*知らない箱罠の設置の仕方を知れた。箱罠の屋根は何も乗せない、床は土や葉っぱで覆うこと。今までの方法と違ったので早速やってみる。

*実際にやっている人の話を聞いたり実践現場を見る機会はないからありがたかった。くくり罠の設置方法を見て、自作している人がいることに驚いたし、可能性が広がった。

*箱罠が欲しくなった。

 

※動画は途中から静止画になりますが、音声は生きています。ぜひご覧ください!

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2025.12.17

鳥獣被害対策の最前線|熊本県実践塾で見えた捕獲とジビエの今

農家ハンター応援団フォトライターの髙木あゆみです。

今回は、熊本県主催「鳥獣被害対策 実践塾」のレポートをお届けします。
本実践塾は、県内市町村の担当者向けに開催されているもので、全3回のプログラム。今回はその第3回目
として、戸馳島を会場に行われました。

現場を実際に見て学ぶフィールドワークと、関係者のリアルな声が詰まった内容でした。

 


【レポートのポイント】

◆  フィールドワーク1:箱罠 〜設置と考え方
◆  フィールドワーク2:減容化施設の役割と課題
◆  フィールドワーク3:ジビエファームの現場
◆  座学:ジビエ利活用の現状と課題
◆  現場の声を聞く!当事者トークセッション


フィールドワーク①|鳥獣被害対策における箱罠の考え方

 

最初に訪れたのは、イノシシの箱罠設置現場です。

 

狩猟と鳥獣被害対策としての捕獲は、似ているようで性格が異なります。
狩猟は嗜好性があり、山に入って行うもの。一方で鳥獣被害対策は、地域や畑に出没し、人や暮らしに被害を与える “加害獣” を、集落や農地周辺で捕獲することが目的です。

狩猟は時期が定められていますが、鳥獣被害対策の捕獲は通年で実施可能です。また、銃を使う狩猟とは異なり、山奥に箱罠を設置することはありません。

 

箱罠の設置場所は変えるべき?

参加者からこんな質問がありました。

| 箱罠の位置は変えますか?

これに対しての答えはこうでした。

| 「捕獲できないのであれば変えます。設置時には獲れそうな場所を選びますが、獲れない場合は、獲れない理由を考えて設置場所を変えることが大切です」

獲れる罠かどうかの判断基準

  • 事前にエサだけを置いて様子を見る

  • 近くに獣道があるか

  • お尻をこすった痕跡がないか

こうした点を確認します。
判断が難しい場合は、猟友会に相談し、協力を仰ぐことも重要だそうです。

新しい箱罠を設置する際の注意点

  • シルバーのメッキ部分は、塗装した方がよい場合もある

  • 色よりも「匂い」への配慮が重要

  • 設置前にしばらく野晒しにして人工的な匂いを落とす

  • 捕獲実績のある場所の土を使い、野生の匂いをつける

動物に警戒させない工夫が欠かせません。

片開きゲートが選ばれる理由

両開きタイプは中央に蹴り糸があるため、動物が奥まで入らないまま扉が閉まり、逃げられる可能性があります。
ただし、大型の箱罠では両開きが適している場合もあります。

 

箱罠とくくり罠のメリット・デメリット

〈メリット〉

  • くくり罠:低コストで設置しやすい

  • 箱罠:安全性が高く、捕獲後すぐに駆けつける必要がない

〈デメリット〉

  • くくり罠:動物が動ける範囲があり危険。ワイヤー切断や反撃のリスク

  • 箱罠:設置やエサに工夫が必要で手軽ではない

罠は「守り」とセットで効果を発揮する

いくら罠を設置しても、地域に簡単に食べられる作物が放置されていれば意味がありません。
例えば、周囲にみかんが落ちていれば、わざわざ危険を冒して箱罠に入ることはないからです。

鳥獣被害対策の基本は、獲る前に「まず守る」こと。
「餌付けSTOP」の取り組みがあってこそ、罠は効果を発揮します。

 

フィールドワーク②|減容化施設が担う役割と課題

捕獲後の処理は、今なお大きな課題です。

ジビエ利活用は全国的に進んでいますが、解体後に残る骨や内臓などの残渣は産業廃棄物となり、処理コストが大きな負担になります。

経験を積めば、解体前にジビエ向きかどうか判断できる場合もありますが、解体後に不適と分かるケースも少なくありません。

 

 

焼却処分には、住民理解や焼却施設整備が必要で、数億円規模の費用がかかります。

山中での埋設処理も簡単ではありません。
重機が入れない場所では手作業で、1.5m以上の穴を掘る必要があります。

現場では「欲しいのは人手ではなく“穴”」と言われるほど、過酷な作業です。

 

 

 

こうした課題を救う存在が減容化施設です。
ただし、課題もあります。

減容化後にできる「イノシシパウダー」をどこで、どう活用するか
堆肥としての活用を目指し、現在も模索が続いています

 

 

フィールドワーク③|ジビエファームから見える現実

ジビエファームでは、前施設長の井上さんが説明を担当しました。

趣味で捕獲した肉を分け合う「猟師肉」と、出荷する食品としてのジビエは全く別物です。
衛生管理を徹底した環境で解体することで、品質と味が守られます。

 

始めてすぐのジビエと、学びを深め経験を積んでからのジビエは全然違ったそうです。井上くんは、自身の失敗談を交えながら話しました。

 

 

ジビエ事業のリアル

ジビエの精肉を手探りで始めた農家ハンターでは、初めて直面することばかりだったそうです。

 

・捕獲した全個体がジビエになると思っていた

・実際は小さい個体や病変のある個体も多い

・1頭から取れるジビエは約3割

・残り7割は処理が必要

・経費は3割の肉から捻出しなければならない

民間事業としては、非常に厳しい現実です。

そのため、いきなり食肉加工施設を作るのではなく、減容化施設から始める流れが望ましいという考えが示されました。

 

座学|熊本県におけるジビエの現状と課題

「ジビエ利活用について」と題して話されたのは、
くまもとジビエコンソーシアム 事務局長・田川敬二さんです。

熊本県内の処理加工施設は、

  • 公設民営:10か所

  • 民設民営:9か所

施設のない市町村も多く、地域によって利活用の差が生じています。

捕獲数は多いのに、鹿のジビエが不足するという矛盾も起きています。

 

ジビエ流通の難しさ

  • 時期による品質・量のばらつき

  • 安定供給が難しい

  • 注文は少量・高品質志向

  • 卸が介在しづらい構造

この課題を解消するため、ワンストップで常時受発注できる仕組みづくりが検討されています。

現場の声を聞く!当事者トークセッション

 

有害鳥獣駆除に携わる4名によるトークセッションも行われました。

「地域を守る」という理想だけでは続かない現実。
行政や地域がどう関わるかを考えるためのプログラムです。

有害鳥獣駆除に取り組む4人によるトークセッションは面白かったです。

 

ゲストは、芦北地域より渡邊義文さん。猟友会事務局長。
そして不知火町の河野通尚さん。柑橘農家であり農家ハンターメンバーでもあります。

それから昨年までイノPに勤めていた井上拓哉さん、そして稲葉たっちゃんの4名です。

 

シビアな話ですが、従事する人がいなくなれば地域にとっての痛手です。誰もがやりたがることではなく、精神的にも肉体的にもハードです。また、捕獲した人には捕獲報奨金が出ますが、罠を設置したり事故で死んだイノシシの撤去を頼まれたり止め刺し(命を止める作業)だけをしたりと、金銭的にもメリットがない作業だけを担うこともあります。

たっちゃんが自分の地域で、地域を巻き込んで対策を進めなかったために「イノシシのことは、達也にさせとけばいい」という空気ができあがってしまったという失敗談を時々話されます。

 

いくつかピックアップしてリアルな(叫び)声をお届けします。

・『イノシシが捕まったけん来てくれ』と呼ばれて行ったらすぐそばに農産物の残渣の山。まず守りを固めて、近づけないようにしてくれ!

・依頼を受けて罠を設置に行っても、地域内で合意形成がとれていないことがある。合意形成は事前に自分たちでしておいてほしい。

・自分の地域はチームで取り組んでいるが、隣の地域が「あそこにやってもらえばいい」と他力本願になっている。

・止め刺しだけ頼まれる。自分もできればしたくはないし、やっても報奨金は捕獲した人にしか入らない。

・埋設場所の確保、運搬用の軽トラの支援があるといい。

・熟練者のルール違反があり、指摘すると怒られる。

・行政の猟友会への関与が不足すると、上層部にとって都合よく物事が進む。機材が若手や末端まで行き渡らなかったり、難しい案件や雑務だけが若手にまわってきたり。行政には農村のため集落のためにもっと関わってもらいたい。どうかビビらないで入ってきて!笑

・「やって当たり前」という空気感や態度を地域の人や行政から感じたら、一気にモチベーション下がる。

 

 

 

 

見えてきた課題

  • 行政職員の知識習得

  • 住民への啓発と講習の実施

  • 猟友会が捕獲に集中できる環境整備

  • 行政の積極的な関与

  • 報奨制度・手当の見直し

 

誰かを責めるのではなく、率直な思いが語られた時間でした。

 

取材を終えて

これまで5年超、農家ハンターやイノPを取材をする中で、
「なんで自分たちがこんなことしなきゃいけないんだ」
という空気を、井上くんやたっちゃんから感じたことはこれまで一度もありません。

ボランティアのような要請があったとしても
地域のため未来のために粛々と、知識を深め、研究し、実践していました。

時に理不尽なこともあるのだと今回知りました。

他の皆さんからのお話もありましたが、

感謝と協力

これに尽きるでのはないかと思います。

 

ということで、これまでにない実践塾、おつかれさまでした!

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2025.12.02

天草市で学ぶ野生獣害対策 ― 捕獲より先の「守る」講座内容とは

農家ハンター応援団フォトライターの髙木あゆみです。
今回は、天草市で開催された果樹農家向けの鳥獣被害対策講座についてレポートします!


天草市では、2024年度のイノシシ捕獲頭数が 1万頭を超えるほど。被害の多さと対策への力の入れ具合は県内でも際立っています。
また、イノシシをまるごとパウダー化できる大規模な減容化施設も整備されており、環境面でも先進的な取り組みが行われています。

今回の講座は、その天草市有明地区で実施されました。

【レポートのポイント】

天草市ではイノシシ捕獲数が1万頭超え。急増の背景と現状を紹介。
講座テーマは「まず守る」。捕獲より先に押さえるべき基本を解説。
シカ被害が広がる前に備える大切さと、果樹農家が取るべき侵入防止策。
イノシシの習性や繁殖期を踏まえ、対策の“がんばりどき”を整理。
天草市の手厚い支援策と、地域全体で取り組む重要性をレポート。


講座のテーマは「その対策、本当に正しい?」

鳥獣被害対策と聞くと「まずは捕獲」と考えがちですが、講座では開口一番、
「まずは守ることが鉄則です」
というお話から始まりました。

シカ被害が広がる前に

天草市は、現状ではシカの生息数は多くありません。
しかし、シカはパール柑や晩柑の葉が大好物。果樹農家にとっては大きな脅威となるため、県南部のように増える前に、侵入を防ぐ対策を進めることが重要だと説明されました。

天草市のイノシシ状況:10年間で大幅増

 

2024年度の天草市におけるイノシシ捕獲頭数は 10,152頭。熊本県内でも突出しています。
10年前は約300頭。捕獲技術の向上もあるものの、個体数そのものが増えていることは間違いありません。

講座では、イノシシを減らすのが難しい理由を2つ挙げられました

①とても頭がいい
イノシシは学習能力が高いため、相手を「知る」ことで初めて対策が効果を発揮します。賢さと執着心を侮ってはいけません。

② 増えるスピードが速い
イノシシは、一度の出産で4〜5頭産むと言われていましたが、栄養状態が良くなったからか8〜10頭産むこともあります。1頭から5〜10頭・・・全体の7割を捕獲しないと実質的に減っていかないと言われています。

箱罠やくくり罠を設置している方も多く、「罠の見回りに1日に2時間かけていられない」というたっちゃんの言葉に頷いておられました。

対策の「がんばる時期」はいつ?

たっちゃん曰く、
年中がんばる必要はない。タイミングを知ることが重要とのこと。

  • 狩猟期が始まるとイノシシは里に出にくくなる

  • 12月後半から発情期に入る

  • 4・5・6月に出産

  • ウリボーが出てくるのは7月頃

こうした生態を知ることで、最も効果的な時期に集中して対策できるのです。

捕獲の前に「餌付けしない」環境づくり

講座で投げかけられた質問。

「傷のあるみかんをその辺に捨てていませんか?」

心当たりのある農家さんもいたようです。
しかしイノシシにとっては、傷んだみかんでも立派なごちそう。

稲についても、一番穂を食べられれば大問題ですが、二番穂は農家側が気にしないため、結果的にイノシシの「美味しかった経験値」になってしまいます。

一度「ここに餌がある」と学習されると、何度でもやってきます。
つまり、

✓ イノシシが来る場所に捨てない
✓ 収穫後は圃場を耕す

これが“知らないうちの餌付け”を防ぐ重要なポイントになります。

話題は電気柵の対策にも移りました。

電柵、2年で効かなくなるという声が時々たっちゃんの耳に入りますが、「そんなことない!」。
テスターで電圧測って、4000v以上流して、下から20cm、40cmに合わせて電線を張ったらちゃんと効果ありますから!!
といつもゴリゴリに伝えています。

天草市の本気度は「予算と施策」に現れている

天草市は鳥獣被害対策に1億円規模の予算を投入しています。これは全国的に見ても大きな数字です。
捕獲報奨金も他地域より高めに設定されていますが、現在は「守りの対策」を強化する方針に伴い、やや抑えられ始めています。

その分、防護柵の設置補助金が手厚いという話もありました。

限られた財源で効果を最大化するために、行政と地域が一体となって学び、守る体制をつくっていく——。
これが天草市の目指す方向なのだと感じました。

たっちゃんも「他の市町村と比べても本気度がすごい」と驚いていました。

参加者から「柵で畑を囲おうと、他の畑に行く」という声がありました。

そうです。
だから集落で対策をできるよう皆で学び、考えていくことが大切です。鳥獣被害対策はチーム戦!

柵や罠の種類、設置場所、地域で考えてレベルアップして守っていきましょう と締め括られました。

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2025.10.17

地域が動く!熊本県・鳥獣被害対策実践塾に見る行政と住民の連携

農家ハンター応援団フォトライターの髙木あゆみです。
今回は、熊本県が主催する行政担当者向け研修『鳥獣被害対策実践塾』の第1回の様子をレポートします。

鳥獣被害の実態や対策の基本を知り、各市町村でどのように対策を進め、どのように住民へ働きかけていくか具体的な事例とともに学びを深めるもので、全3回開催されます。


【レポートのポイント】

◆ 行政×地域×農家ハンターの協働
◆ 現場から学ぶ鳥獣被害対策と合意形成
◆ 住民主体で進める地域防除
◆ 江戸から続く、日本の害獣管理の知恵


野生鳥獣による被害の実態と対策の基本

どのような対策が有効なのか、担当者の方も最初は知らないことが多いのが実情です。こうして学びを深めることで地域に知識を渡してくださいます。

えづけSTOP!と合言葉のように言いますが、何が餌付けにつながるのかのイメージが具体的になってきたかと思います。

 

メモを取る方の人数、メモの量は、これまでのセミナーや講座の中で群を抜いていたかもしれません。

東海大学内のホールの広さ、美しさ、映画館サイズのスクリーンに驚きました。。。
みなさんも驚いておられました笑

 

 

 

 

 

行政の担当者の方にとって重要なことは、地域のみなさんとどう足並みを揃えて取り組んでいくかです。
行政が前を走りすぎても、地域に対して非協力的でもうまくいきません。補助金の情報や、経験に基づかない確な対策の方法をこうして学べる機会を得やすいのは行政だからこそです。

どうやって足並みを揃えて取り組めるか、合意形成をしていくかを、これまでの農家ハンターの活動を事例に挙げながら、楠田さんが話しました。

 

涙のトークセッション

登壇されたのは次の皆さんです。

阿蘇市担当者 宮岡さん、阿蘇市山田地区 区長・笹原さん、阿蘇市山田地区 中西さん、
南小国町担当者 麻生さん、前担当者 武田さん、 南小国町 波居原地区 区長・井野さん。

阿蘇市のこれまでの取り組みや南小国町での取り組みは前のブログをご覧ください。

南小国町での取り組み: https://hunter.inop.co.jp/blog/5481

阿蘇市から南小国町へ視察の様子:https://hunter.inop.co.jp/blog/5144

阿蘇市での取り組み: 阿蘇市山田地区の取り組み

 

南小国町 波居原地区の取り組み

南小国町 波居原地区の井野区長から、鳥獣対策に取り組み始めたきっかけとして、町の代表者を集めて開催されたセミナーがあったと話されました。

・これまで自分たちがそれぞれ取り組んでいた鳥獣害対策は、間違っていることがたくさんあった。
・地区の皆さんに周知する必要性を感じて、地区でのセミナーを行うよう依頼した。
・イノPが持ってきてくれたジビエの加工品が楽しみで来るきっかけになった人もいた。
・同じ農家で、同じ悩みを持って取り組んできた農家ハンター/イノPだからこそ、自分たちが悩んでいることを理解した上で話してくれた。それが町の皆さんの心に届いたのだと思う。
・その結果、電柵に触れないように草刈りをマメにしたり、見回りの際に電圧を測ったりするようになった。

 

稲葉たっちゃんは、「これまでの活動が地域に届いていた」と、思わず涙ぐんでました🥲

 

阿蘇市 山田地区の取り組み

2年ほど前、阿蘇市で自治会長向けに講演をした際、取り組みたい地区がないか問いかけました。そこで手を挙げたのが山田地区でした。

 

阿蘇市山田地区の笹原区長と農家の中西さんから、阿蘇市山田地区での動きについて紹介がありました。

・前任の区長が「やろう!」と手を挙げてくれていた。
・近年イノシシが川を越えてやってくるようになり、畑での被害も増え、住居の周りに野生動物が出てくるようになり、人的被害を一番心配していた。
・若手のメンバーに相談したところ、やれるだけやってみようという話になった。農家の中でも鳥獣害問題について意識が高まり、狩猟免許取得者が数名いたこともあり、集落をあげて取り組もうという空気ができた。
・南小国町に視察に行き、対策の事例を見せてもらった。
・7月に800mほどの防護柵をイノP指導のもと、みんなで張った。それから2ヶ月、動物には入られていない。

 

 

みんなで取り組む地区の共通点とは?行政と地域が協力できる条件

阿蘇市や南小国町で「みんなでやろう!」と手を挙げた地区には、いくつかの共通点が見えてきました。
それは、被害の深刻さだけでなく、地域のつながりの強さリーダーの存在など、日常の中にある要素が大きく関係しています。

阿蘇市の特徴

集落としてのまとまりがしっかりしている地区が手を挙げる傾向にありました。
さらに、代表者が農家であり、自らが被害を受けている当事者であるかも大きな要因かもしれません。
その危機感が、地域全体の動きを後押ししていました。

また、若手農家が積極的に参加し、リーダーを支える体制があるのも特徴的です。
「自分たちの地域は自分たちで守る」という意識が芽生え、行動に結びついていました

南小国町の特徴

一方の南小国町では、地域にリーダーシップのある人物がいることが強みでした。
日頃から草刈りや花植え、子ども会などの活動が盛んで、住民同士の信頼関係が深く根付いています。
そのため、新しい取り組みも自然と受け入れられやすく、助け合いの文化が鳥獣害対策にも生きているのかもしれません。

 

共通する成功のポイント

阿蘇市・南小国町の事例を比べると、成功する地区にはいくつかの共通点がありました。

  • 主体性:行政任せにせず、「自分たちの課題」として取り組んでいる。

  • リーダーの存在:信頼される人が中心となり、地区全体を巻き込んでいる。

 

 

実践後、どう変化したか

・阿蘇市山田地区では、800mの電気柵を張った時、みんながみんなやる気があったわけではなかった。しかし各々取り組んでも地域全体での解決につながらない、みんなですれば見回りも分担できるということを説明していき、合意形成ができてきた。
・柵を張る作業はボランティアだったが、今後は日当が出るようにしたい

 

柵を張る場所をどうやって決めたか?

・各集落から候補地を一つずつ出して、役員会でさらに絞り、イノPに相談して決めた。
・被害の大きさや維持管理していける後継者がいるかなどを踏まえて決定した。

 

行政はどのような役割があるか

・市役所、役場、どうにかしてくれという声が多く届く。対策は住民主体であることを丁寧に説明し、ともに学びながら進めていく姿勢を大切にしている
・行政主体になると、「やらされている感」が出てくる。声も届きにくくなる。

 

民間の農家ハンター/イノPや第3者の役割

・行政からだと住民に届きづらい声も、届けることができる。コミュニケーションが円滑になる。
・お酒を交えた交流会で、距離が近くなり話しやすくなることがあった。

 

参加者の方からの質問もありました。

「日頃の集落での活動はどんなふうに生まれているか?鳥獣害対策に行く前の、集落の活動を知りたい。」

・子供会、春と秋の草刈り、老人会、婦人会、花植え、子どもたちのスイカ割り、体験学習など日頃の活動は充実している。
・牧野の維持管理が大変な地域でもある。人と動物の棲み分けが今後ますます課題になる。もともと活動のほかに、野焼きの文化があるので、地域で協力して取り組む風土があったのは結束は強いのではないか

 

今後の抱負

・高齢化が進み、農業に携わる人は減っていく。その中でいかに今の農地を実施していくか、今の地区を維持していくのかという課題に、町といろいろな方々の意見を聞きながら、今後の課題として取り組んでいきたい。

南小国町
・3地区での取り組みを町の優良事例ということで、町内に広げていきたい。

・鳥獣害対策もしながら、農地を守り、儲かる農業をしていくのは本当に難しい課題じゃないかと日々感じている。地域の皆さんと協力しながら農地を維持していきながら、儲かる農業を実践して、若い人たちをいい地域に残していく活動をでやっていこうという思い

阿蘇市
・阿蘇市はどちらかというと、鳥獣害対策は遅れている方。山田地区が成功事例となって、他の地区に波及していければ。

 

 

 

ワークショップ!各地域の事例を聞いて自分の地域で取り入れたいこと

グループを星座の名前で分けてワークショップを行いました。
自分たちの地域で、どんなことを取り入れたいか?

明日から生かせるように、具体的なこと話し合い、シェアする時間でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・モデル地区をつくる
・第3者を交えることで潤滑油をつくる
・住民主体であることを伝えていく
・集落ごとの勉強会を実施

・リーダーとサブリーダーの確保
・農家以外の人も巻き込んで、地域みんなでえづけSTOP!
・共有地という概念
・地域と畑は自分たちで守る!理念を伝える

などが上がりました。

 


東海大学農学教育実習センター長・岡本智伸先生による講演

 

最後のプログラムは、東海大学農学教育実習センター長・岡本智伸先生による講演です。

学生さんも参加されていました。

 

わたしがおもしろかった点を独断と偏見で要点をお裾分けしますね。

・2000年頃は、九州では被害がありつつもそこまで深刻ではなかった。九州は平野部が広いため生息密度が農地に迫っておらず、脅威に感じる必要がなかった。

・被害というのは人間が感じていること。人間が動物にとってどんな環境を作っているのか、行動、活動、考え方が大きな要因になっている。

 

・4つの管理
①生息環境の管理 ②被害防止の管理 ③動物の個体種の管理 ④仕組みの管理

 

・【シカ】阿蘇には牧草地がある。冬でも緑の牧草地があり、そこに入ればシカにとっては餌がたくさん!1ヘクタールあたり冬場に11頭を養えるくらいのものがある。死なない、増えていく、無意識の餌付けになっている。

 

・シカは、ジャンプして餌場に入ると思われているが、ジャンプには怪我の危険が伴うためそんな簡単にしない。通常はツノが邪魔になったとしても、潜れるところを探していく特性がある。動物の特性を知る。

 

・ピンクのテープなどの感覚刺激をつかった防除実験結果・・・餌があれば入ってくる。数日で効果がなくなる。

 

・地域の人のパワーが、野生動物を入れないバリケードのような役割を担っている。

 

・地域を守ることが、自分の農地を守ることにつながる。全体がハッピーにならなければ個々のハッピーにつながらない。

 

 

害獣の管理技術が江戸時代まで発達していた!

・江戸時代は石垣で動物の侵入を防いでいた
・鉄砲は農家に集められていて、捕獲した人への報酬などもあり、対策の中心には農家がいた。

・西洋では、狩猟によって多くの野生動物が絶滅していったが、日本では、野生動物への愛着や信仰、神話などから乱獲に至らなかった。里山に出てきた動物を捕獲するやり方がとられていた。

・西洋が日本の動物の毛皮や羽毛を買い付けるようになり、動物が減る。獣害が起こらなくなる。その後、鳥獣保護法で守られるようになった。

・経済成長が進み、保護も進み数が増え、勢力を拡大していき、1990年代から農業ヤバいな…ということになった。
・日本では約140年間、害獣管理の技術をほとんど使わず、知識が途絶えてしまっている
・放棄地が増え、そこに動物が入ってくる。

 

ということで、農家が鳥獣対策の中心的役割を担うのは、江戸から続く日本における害獣管理のやり方だったのですね!


締めくくりにふさわしい講演で、私自身も多くの学びを得ました。密度の濃い一日、本当にお疲れさまでした💡

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